カヲシン小説⇒5月3日





それは授業が終わった放課中のことだった。



「聞いてくれ、シンジ君!」

カヲル君が突然やって来たのだ。
といってもアニメの登場シーンだって突然でてきてたような。
『歌はいいねえ』って…。懐かしいなぁ。


「何?カヲル君。」
「今日は世間一般では5月3日=カヲシンの日なのに、
柚木原は今日も『ロイエドロイエド』って騒いでるんだっ!!折角の“僕たちの日”なのに…。」

(それって、世間一般のことなのかな?)
カヲル君の切羽詰まったような言葉に疑問を感じながらも、僕は応えることにした。

「仕方ないよ。きっと柚木原も忙しいんだろうし。
それに元々此処は、鋼=ロイエドが本命だったような気がするけど…。」

僕は思ったことを口にしたけど、カヲル君はちょっと呆れたようにため息をついた。

「シンジ君。君が遠慮がちで誰に対しても優しいことは僕が一番よく分かってるよ。
でも、こういうときぐらいは文句の一つぐらいは言ったっていいんだよ。
『僕たちの記念日なのにっ!』って。」

(“僕たちの記念日”ってカヲル君、もの凄く気にしてる?)

「それともシンジ君にとって僕はどうでもいい存在なのかな…。」

(今度は落ち込んじゃったのかな。なんか拗ねてる感じもするけど…。)

僕の思ったことは当たって、カヲル君は拗ねてしまったみたいだ。

(う〜ん。どうしたらいいのかな。こういうとき。原因はきっと僕なんだろうなぁ。)
とりあえず、機嫌直してくれないかなぁ。
僕はそれはもう切実に願った。

って何時まで考えてるんだよ!!

「そっ、そんなことないよ!カヲル君は、僕の・・・・・・、友達だし…。」

「その『カヲル君は、僕の・・・・・・』の間って何?」

ますますご機嫌斜めで、怒ってる感じがする。
その証にカヲル君の言葉遣い、いつもとちょっと違うような…。

「シンジにとっての僕は所詮“友達”みたいだし。」
「・・・・・・・・・。」

ああ、すっごく機嫌悪いや。
でも僕にはもう言葉が見つからなかった。
カヲル君がいつも以上に、普段見せない顔をするから。

「もうその辺にしといたら?」

意外な仲介が入った。

「アスカ!!」
「セカンド…。」
「私もいるわ。」
「綾波!?」

こっちも意外だよね。アスカに綾波まで来るなんて。
…二人ともどうしたんだろう。

「シンジ!!今私のこと意外だって思ったでしょっ!」

うぅ。ズバッと読んでる!流石アスカ。
僕って本当に顔に出やすいんだもんな。つくづく嫌になってくるよ。

「――話はだいたい聞いてたわ。
5月3日がカヲシンだってところから馬鹿シンジの友達宣言までね。」

つまりは全部側で聞いてたってことか。
放課中だからもあるだろうけど、最初から聞いてたならそう言えばいいのに。

「改めて言っておくけど、
5月3日は憲法記念日であって世間一般でそんな話なんてないわよ。」

そんなの僕だって知ってるよ!
…カヲルだって頭いいんだしそんな当たり前のこと知ってるだろうし。

「でもカヲルのこと友達って…、シンジ少しは素直にでもなったら?」

アスカには言われたくないよ!!
ってあれ?素直って何だ?

「シンジがカヲルのこと友達以上ぐらいに見てるのは、誰でも判りきってることなんだし。」

『友達以上』、『判りきったこと』。

「何だよ、それっ!!!」

「はぁ。ホント、馬鹿シンジが鈍すぎて聞いてるこっちが歯がゆいのよ!
つまりシンジはカヲルのことが好きなのっ!!」

もぉ〜〜〜。ホンットに相当のバカねっ!!とか罵ってるけど、耳には全然入ってこなくて、
つまり僕は、その、カヲル君が、友達以上とゆーか…、好きなんだ。
もしかして…。
「もしかしなくて恋でしょっ!!!」

や、やっぱりそうなんだ。

「カヲルもそろそろ何か言えば?」

・・・・・・・・・。
カヲルって、ええっ???

「僕はまだ遠慮しとくよ。
今はセカンドの独壇場になってるし、シンジ君も混乱してるみたいでし。」

そういえば元々の話はカヲル君からだった。
すっかり忘れてた。
さっきのアスカの話、カヲル君も聞いてたよね、とゆーか聞こえてたよね。
僕って…。

「私も、カヲシンを描いてもらいたいから。
この際くっついてもらいたくて。…書く方でも構わないんだけど。」

綾波まで!?
一体どうなってるんだよ〜。
二人して僕たちが“恋人”にならないからって、今この場で言っちゃったの?
もう少し本人への気遣いとかは…、って僕が一番鈍かった訳なんだよね。
何だかなぁ…。

カヲル君はどう思ってるんだろう。

「ほら、出番ね、カヲル。」

みっ、みんなして僕の心の中まで覗いてっ!酷いよ!!

「…シンジ君。」

意識しちゃうじゃんかぁ。

「ギャラリーがいるのは残念だけど、
僕に代わってズバッと言ってくれたことだしね。その辺は見ないことにしとくよ。」

カヲル君はいつの間にか元のにこにことした笑顔に戻っていた。


「――僕はシンジ君、君が好きだよ。
それで、シンジ君は僕のことをどう思ってるの?」

さっき散々アスカに言われるのを聞いてたんなら、
もう答えなんて判りきってるくせに、今更聞くなんて卑怯だよ。僕が悪かったにせよ。

…でも、やっぱり、嬉しいよ。

「僕は・・・、カヲル君が、好きだよ!!」

その瞬間カヲル君は、僕を、抱きしめた。力一杯。
僕はもう、自分の顔が真っ赤に赤面するのを止められそうになかった。

「ありがとう」

そう、カヲル君が囁いた。

「ファースト!撮れた?」
「バッチリよ!!」

へ?

「僕にもダビングよろしく。」
「ええ。協力に感謝してるわ。」

『撮れた』、『ダビング』・・・・・・。

「まさか…、ビデオに撮ってたのっ!?」
「「「もちろん。」」」

「あんたバカァ?」

『バカ』って本日3度目だよ、アスカ。

「こういうときにビデオ使わないで、何時使えって言うのよっ!!」
「別にいつでもあるだろ、そんなの!」

僕も怒りモードに入っていた。自分が可哀相になってきて、意地を張った。

「…みんなしてグルだったの?」
「「「もちろん。」」」

さっきの会話からして判ることだった。

「さっきも言ってたけど、柚木原があまりにもカヲシンを描いてくれなかったから、
もうこの際本人たちにやってもらおうと思って。」

唯一普通だと思ってた綾波までもそんなこと言ってるし…。


「シンジ君、僕も君が中々素直になってくれなかったから、
ついつい意地悪しちゃったんだよ。 ごめんね。」

好きな人にそんなこと言われたら、もう僕の怒りだって収まっちゃうよ。
『たまには文句の一つくらい』って言ってたのは誰だよっ!

「シンジ君、怒ってる?」

だからそんなこと聞かないでよっ!!

「・・・・・・もういいよ。」

今日ぐらいは『怒ってる』って言うつもりだったのに。
カヲル君にそんな風に聞かれたら、普通怒れないよ。


そんな僕を知ってか知らずか、カヲル君は目を細めて笑った。
すごく綺麗だった。

僕はその笑顔を忘れられないだろうなぁと、心のどこかで思った。






――結局あの例のビデオは、綾波、アスカ、そしてカヲル君が持っている。

僕は最近できた彼氏?以上に手強い彼女たちに勝てなかったのだ。
しかもそのビデオの話を誰が最初に持ち出したのか、聞きそびれてしまった。

僕が一番手強い相手が彼女たちではなく、“彼”の方だったと気づくのは、
もう少し先のお話である。










END



テーマ : 新世紀エヴァンゲリオン - ジャンル : アニメ・コミック